仮想デスクトップインフラ(VDI)を利用すると、企業はリモートのデータサーバー(通常はクラウド)上で稼働する仮想マシン(VM)と同期したデスクトップの仮想イメージを作成できます。仮想デスクトップによって、ユーザーはVMのオペレーティングシステムにアクセスし、そのアプリやソフトウェアを実行したり、ファイルにアクセスしたりできます。
VDIは、コストを削減し、パフォーマンスを高め、デジタル業務をカスタマイズし、プライバシーとセキュリティを強化しながら、IT部門によるインフラの管理を強化します。
VDIには多くのメリットがある一方、課題も存在するため、適切な計画、導入、構成、運用が最優先事項となります。本記事では、VDIを成功裏に導入するためのステップに加え、避けるべき一般的なミスと、VDIを円滑に展開するためのベストプラクティスを紹介します。
ステップ1:VDIのビジネスプランを策定する
新しいテクノロジーの氾濫、ソフトウェアベンダー市場の充実、そして急速なイノベーションの進展により、企業は競争で優位に立つため新たなソリューションの導入を迫られています。しかしVDIは、明確なビジネスプランなしに導入すべき実験的なテクノロジーではありません。
VDI導入前に答えるべき質問
開始前に、企業はいくつかの質問に答えなければなりません。
- なぜVDIテクノロジーが必要なのか?
- 具体的に、VDIはどのようなビジネス上の課題を解決し、どのような目標の達成に役立つのか?
- 誰がこのテクノロジーを利用するのか?
これらの質問は、必要なVDIの種類を決めるうえで重要です。ユーザーがデスクトップをパーソナライズできる永続型VDIなのか、それとも変更できない一時的なクローンとしてデスクトップ環境を提供する非永続型VDIなのかを明確にできます。
さらに、VDIプロジェクトの範囲を把握することで、必要となるハードウェア、ソフトウェア、ストレージとコンピューティング能力、予算、運用上の要件が決まります。
VDIのビジネス上のメリット
企業がVDIの恩恵を受けられるシナリオはいくつかあります。よくある例は、安全なアクセスを提供する必要があり、リモートワーカーが中規模から大規模に及ぶ企業です。
もう1つの一般的なユースケースは、医療、公共図書館、教育などの業界に属する組織です。こうした組織では、キオスク型ハードウェアシステムやユーザー自身のBYODデバイスを通じて、特定のデジタルリソースへのアクセスをユーザーに提供する必要があります。
企業は、IT業務を集約し、サイロを排除し、システムを保護し、ハードウェアとソフトウェアのコストを削減するためにVDIを導入します。
VDIのビジネスプランでは、企業がプロジェクト単位で進めるのか、部門単位で進めるのかを検討する必要があります。また、システムへのアクセスが見込まれるユーザー数を考慮し、パフォーマンスのピークを算出するとともに、規模の拡大(または縮小)や水平スケールに対応できるようにしなければなりません。
ネットワークやテストなど、以下のステップで説明するその他の関連技術要因も、計画に含める必要があります。
ステップ2:VDIベンダーを選定する
市場には数多くのVDIベンダーが存在し、どのベンダーを選ぶべきかの判断は容易ではありません。VDI業界の大手にはVMware Horizon、Microsoft Azure、Citrix Virtual Apps、Amazon Workspaces、そしてOracle VirtualBoxがあります。
各ベンダーは、それぞれ異なるアプローチでVDIを提供しています。ただし、ハイパーバイザー(VMの開発、導入、管理に使用する専用ソフトウェア)、ストレージ、処理能力、クラウドおよびオンプレミスで利用できるハードウェアとソフトウェアのリソース、セキュリティとコンプライアンスなど、共通する機能も備えています。
各社はVDIのビジネスプランに基づき、ベンダーが提供するソリューションと機能を評価し、自社に最適なものを見極めなければなりません。使いやすさ、サポート、コストなどの要素を比較することも、判断材料になります。
ステップ3:ハードウェアとソフトウェアを調達・セットアップする
第3のステップは、最も技術的な難題の1つです。VDIを導入するには、必要なハードウェアとソフトウェアがすべて揃っていることを確認しなければなりません。ハイパーバイザーを使ってVMを作成し、その後、そのVMの仮想デスクトップイメージを作成する必要があります。
ストレージ、処理能力、メモリなど、必要なすべてのリソースをVMに割り当てなければなりません。これらのリソースは、VDIプロジェクトの性質と、導入するVDIの種類によって異なります。永続型VDIではより多くのストレージ容量が必要となり、コストも高くなる可能性がある点に注意してください。
ネットワークも、トラフィックとユーザーの要求に対応できるよう準備する必要があります。ピーク時の利用量を慎重に計算し、需要の急増を予測するとともに、ネットワーク構成、セキュリティ、プライバシーも考慮しなければなりません。
VDIベンダーは、VMへの適切なリソース割り当てなど、初期段階で優れたガイダンスを提供できます。ただし、支援を受けたとしても、このステップを正しく進めるにはITチームが適切なスキルを備えている必要があります。
ステップ4:ビジネスに適したユーザー中心の仮想デスクトップイメージを開発する
パートナーにシステムへのアクセスを提供して業務を効率化するためにVDIを構築する場合でも、世界各地の人材で構成されるワークフォースが会社を動かしている場合でも、仮想デスクトップの第一の目的はユーザーの役に立つことです。
仮想デスクトップイメージがその目的に沿って設計されていることを確認してください。ユーザーのニーズを考慮しましょう。
例えば、ユーザーに高度な技術スキルがない場合、VDIは使いやすいものでなければなりません。一方、ユーザーの大半が開発者である場合は、変更を加えたり、ファイルを保存したり、環境やOSをカスタマイズしたりできる適切なアクセスレベルを与えるとよいでしょう。最終的に、作成するデスクトップはユーザー中心である必要があります。
明確なユーザーコミュニケーション計画も策定する必要があります。計画には以下の要素を含めなければなりません。
- オンボーディング:すべてのユーザーにVDIとは何か、どのように使うのかを伝える情報。
- フィードバック:ユーザーがスムーズにフィードバックを提供できる仕組み。
- サポート、リソース、ガイド:IT部門は適切なチャネルを通じてサポートを提供し、ユーザーが日常的なプロセスを進められるようリソースを用意する必要があります。
ステップ5:セキュリティとコンプライアンス
VDIの導入を検討する前に、システム、VDI、VM、クラウド、オンプレミス環境、ネットワークについて、セキュリティ、プライバシー、コンプライアンス上の弱点がないか、もう一度確認してください。VDIでは、多数のユーザーが幅広いデバイスを使ってリモートからシステムに接続するため、セキュリティリスクが高くなります。適切なサイバーセキュリティソリューションがすべて稼働し、更新され、正しく構成されていることを確認してください。
ステップ6:パイロットテストを実施してフィードバックを得る
パイロットテストの段階は任意ではなく、導入前に企業が必ず実施すべきステップです。この段階では、選定した一部のユーザーを対象に、短く明確に定めた期間で小規模なパイロットテストを行います。
このテスト中、ITチームはVDI、VM、クラウドまたはオンプレミスのインフラ、ネットワーク、デバイスがどのように動作するかを監視します。弱点、バグ、問題を探す絶好の機会です。ITチームが見落としがちな一方で、エンドユーザーが実際に経験する問題も多いため、必ずユーザーからのフィードバックをテストに含めてください。
ステップ7:導入、監視、調整を行う
VDIの導入は、一度実施すれば終わるイベントではありません。導入前に企業はパフォーマンスの基準値を設定し、それが達成されていることを確認するためにシステムを監視する必要があります。また、VDIが稼働し始めると、パフォーマンス、セキュリティ、規模の拡大に向けて、新たな問題が見つかったり、システムの更新が必要になったりすることは避けられません。
VDIは常に変化しています。継続的な監視、ユーザーのプロファイリングとデバイスの識別、認証の付与と適切な構成、VMの微調整やスケールが必要です。プロジェクトの全期間を通じて、監視と調整を行わなければなりません。
VDI導入時によくあるミス
リソースの割り当て、スケーリング、テストとフィードバック、セキュリティなど、追跡すべき事項が多いため、ITチームが導入時にミスを犯すのも無理はありません。
最も重要なポイントをすべて押さえられているか確認するための簡単なチェックリストを紹介します。
VDIのリソースを適切に割り当てましたか?
ビジネス目標を達成するためにVDIにどのようなリソースが必要かを正確に見積もるのは困難です。VMを作成する際、ストレージ容量やメモリなど、基本的なハードウェア要件の計算を誤る組織は少なくありません。VDIの稼働に必要なすべてのリソースを割り当てられるよう、専門家やベンダーに相談してください。
成長や縮小に備えましたか?
VDIとそのすべてのコンポーネントが柔軟で、規模を拡大・縮小できるようにすることが重要です。需要が高まったときにリソースが不足したり、厳しい状況でコストを削減できなかったりすることは、企業にとって絶対に避けたい事態です。必要な柔軟性を確保し、将来に備えて計画を立ててください。
関係者全員を巻き込みましたか?
ユーザー、パートナー、経営幹部に至るまで、VDIを利用するすべての人が、テクノロジーの概要、仕組み、可能なことについて十分な情報を得ている必要があります。プロジェクトの最初からすべての関係者を巻き込むことが、成功の鍵となります。ユーザーが必要としていない、使いにくい、または業務に適していないシステムを構築してしまうのは避けなければなりません。
ITチームは業務に適した体制になっていますか?
VDIテクノロジーの導入、運用、調整には高度な技術スキルが必要です。ITチームの人数は多くなくても構いませんが、ビジネスに不可欠な業務を支えるテクノロジーを管理するために、適切な経験とトレーニングを備えている必要があります。
優れたITチームは、コスト、パフォーマンス、可視性、意思決定、そして最終的な利益に大きな影響を与え、結果を大きく左右します。専門知識を持つ人材を配置し、業務に対応できる状態を整えておきましょう。
テストを実施し、コミュニケーション計画を策定しましたか?
テスト段階は、潜在的な問題を特定し、導入前に解決するために不可欠です。VDIをテストせず、大規模なリリースに踏み切ると、プロジェクトが後退し、時間と費用を失うことになりかねません。
さらに、多くの企業はコミュニケーション計画を策定しなかったり、導入後に策定することを決めたりします。これも遅延やITチームの大量の未処理案件につながる可能性があります。ITチームは数多くのサポート問い合わせへの対応を迫られ、システムに過大な負荷がかかることになります。
サイバーセキュリティソリューションの準備はできていますか?
VDIベンダーは、ネットワークセキュリティだけでなく、VDIとVMのサイバーセキュリティも提供しています。ただし、セキュリティ態勢を強化する新たな層を構築するため、追加のセキュリティソリューションを導入することが推奨されます。
VDIの安全性を高めるのに役立つコンポーネントはいくつかあります。これにはエンドポイントの検出と対応(EDR)、サイバー脅威インテリジェンスソリューション、ネットワークセキュリティ、ユーザーを重視したサイバーセキュリティ意識向上トレーニングなどが含まれます。システムがプライベートかつ安全で、サイバー攻撃に対処できる状態であることを確認してください。
VDIのベストプラクティスと検討すべきヒント
基本的なステップとよくあるミスに加えて、VDIを円滑かつ成功裏に導入できる可能性を高める、あまり知られていない実践的なヒントもあります。ここでは、VDI導入の出発点となるベストプラクティスをいくつか紹介します。
大きな構想を持ちつつ、小さな成功を積み重ねる
テクノロジーを導入する際は、VDIのビジネスプラン全体を常に念頭に置きつつ、小さく始め、必要に応じて規模を拡大しましょう。後に全社へVDIを導入する計画がある場合でも、1つの部門や小規模なプロジェクトから始められます。小さく始めることで、小さな成功を積み重ね、リスクをより効果的に軽減できます。小さな成功が、前進するための勢いを生み出します。
パフォーマンス監視ツールを使用する
適切なリソース、ハードウェア、ソフトウェア、VM、ネットワークインフラが揃っていることを確認するには、パフォーマンス監視ツールを使用します。こうしたソリューションによって、仮想デスクトップのリソース消費を可視化し、全体的な需要を満たしていることを確認できます。ユーザーの要件を評価したり、サーバーのパフォーマンスを監視したり、ワークロード、リソース不足、ピーク負荷などのデータを取得したりすることも可能です。
柔軟に、変化を受け入れる
VDIインフラは、固定化されたものであってはなりません。柔軟性を持たせ、随時アップグレードする必要があります。インフラを継続的に監視し、ユーザーからフィードバックを得て、規模の縮小や拡大に対応できるようにしておきましょう。さらに、調整が必要になる可能性のあるサイバーセキュリティの脅威や新たな法律にも常に注意を払ってください。
ユーザーを考慮する
ユーザー中心のVDIテクノロジーの重要性についてはすでに説明しましたが、改めて強調しておいて損はありません。VDIは、ユーザーにメリットをもたらして初めて企業にも利益をもたらすことを忘れないでください。
予算とソフトウェアの集約
VDIの最も大きなメリットの1つは、コストを削減し、業務を簡素化できることです。VDIへの支出がビジネスプランに沿っていること、そして期待どおりにコスト削減が実現していることを確認してください。そうでなければ、必要に応じて予算、計算、テクノロジーのいずれかを調整しましょう。
さらに、テクノロジーとソリューションが重複していないことを確認してください。ソフトウェアを集約することで、企業は予算を適切に管理し、リスクを回避し、ユーザーの混乱を防げます。
適切なアクセス権を付与する
すべてのユーザーがシステムに同じアクセス権を必要とするわけではなく、VDIで脅威を防ぐには認証セキュリティが不可欠です。ユーザーに適切なアクセス権を付与し、正しく認証されていることを確認してください。
計画を守る
ビジネスプラン、目標、ターゲット、ベンチマークを常に参照してください。計画を変更する必要が生じたとしても、導入前後のVDIの設計図および指針として機能させるべきです。
結論:組織でVDI導入を始めるには
VDIは、世界中の数十万社がビジネスの運営、パートナーとのやり取り、あらゆるレベルの従業員へのデジタルリソースの提供に利用しているテクノロジーです。
ビジネスプランの策定から、適切なベンダーの選定、VM、ネットワーク、ユーザー中心の仮想デスクトップの作成・管理まで、このガイドではVDIを成功裏に導入するためのシンプルな7つのステップを紹介しました。
さらに、本稿では一般的なミスを通じて、このテクノロジーが抱える主な技術的・戦略的課題にも触れました。ベストプラクティスを念頭に置けば、業務の規模や複雑さを問わず、あらゆる企業がVDIを活用し、近代化、迅速化を進め、仮想デスクトップテクノロジーの最先端に立つことができます。
以下は、VDI導入で提携すべき優れた仮想化企業と、提携先を選ぶ方法に関するヒントです。