「仮想サーバー」と「物理サーバー」という用語は、有形または無形の存在状態を指すのではなく、マシンがどのように構成されているかを指す。
すべてのデジタルデータとシステムは、現実世界のどこかに存在し、ホスティングされなければならない。クラウド上で動作するプラットフォーム、個人アカウント、オンラインで訪問する企業のWebサイト、スマートフォン上のアプリはすべて、ホスティング先である実際のマシンまでたどることができる。
それでは、背後にあるテクノロジーを詳しく見ていく前に、両方の用語について標準的な短い定義を確認しておこう。
- 物理サーバー:物理サーバーとは、アプリケーションやサービスを実行するために使われるハードウェアデバイスだ。CPU、メモリ、ストレージ、ネットワークなど、専用のリソースを備えている。物理サーバーは、オンプレミス運用や、高性能で分離された専用のデジタルシステムを必要とする組織に利用されている。
- 仮想サーバー:仮想サーバーとは、物理サーバーをソフトウェアで再現したものだ。ハイパーバイザーを使って構築される。ハイパーバイザーは、実際の物理ハードウェアの上位層に存在する仮想マシン(VM)を作成・管理する。1台の物理サーバー上に複数のVMを作成し、リソースを共有できる。仮想サーバーは、ハードウェアリソースを最大限に活用するためにクラウドコンピューティング事業者が利用するほか、開発者のテスト環境にも使われており、オンライン世界の大部分を支えている。
物理サーバーとは?
「物理サーバー」とは、シャーシ、CPU、GPU、RAM、ストレージ、電源ユニット、ネットワークインターフェース、OS、サーバーアプリケーションソフトウェアなどを備えた、あらゆるマシンを指す。物理サーバーは通常、24時間365日の稼働を前提に設計されており、一般的なコンピューティングではなく、Webサーバーやホスティングなど、ほかのコンピューターにサービスを提供するアプリケーションや、その他のサーバータスクの実行に使われる。
そのマシンが小型デスクトップコンピューターであろうと大型のラックマウント型サーバーであろうと、また設置場所がどこであろうと、常に物理サーバーである。技術的には、この種のマシンはベアメタルサーバーとも呼ばれる。ベアメタルサーバーは、組織が自社拠点で専有して運用することも、主要なクラウド事業者を通じて利用することもできる。
主な特徴
物理サーバーと仮想サーバーの最も重要な違いは、前者がマシンのすべてのリソースを自分だけで利用できる点にある。そのため、物理サーバーは非常に安全で高い性能を発揮する。物理サーバーの主な特徴は次のとおりだ。
- 高い性能:ベアメタルサーバーは、サーバーのリソースをほかのユーザーと共有しないため、仮想サーバーより優れた性能を提供できる。
- 高い分離性:物理サーバーは仮想サーバーよりも分離性が高く、セキュリティと信頼性が向上する。
- 高い制御性:物理サーバーでは、ハードウェアやソフトウェア、その運用をより細かく制御できる。
- 専用リソース:物理サーバーには、CPU、メモリ、ストレージ、ネットワークなどの専用リソースがある。つまり、これらのリソースをほかのサーバーと共有しないため、性能と分離性を高められる。
- スケーラビリティ:物理サーバーは、ハードウェアコンポーネントを追加・削除することで、規模を拡大または縮小できる。ワークロードが変動する企業にとって有用だ。
- 信頼性:物理サーバーは、同じような仮想化オーバーヘッドの影響を受けないため、一般に仮想サーバーより信頼性が高い。ただし、単一障害点となるリスクがある。
用途
2000年代初頭には、世界のサーバーの大半が物理サーバーだった。つまり、デジタルシステムは「個々の」マシンによって稼働しており、通常は各企業が自社のITシステムを動かすためにサーバーを保有していた。
現在では状況が変わり、世界のサーバーワークロードの大半をVMが担っている。しかし、物理サーバーは現代のITインフラにも依然として居場所があり、さまざまな負荷の高いワークロードに利用されている。
物理サーバーの代表的な用途は次のとおりだ。
- ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC):HPCワークロードには、高い性能とスケーラビリティが求められる。物理サーバーでHPCクラスターを構築し、複雑な科学・工学シミュレーションを実行できる。
- 機械学習(ML):物理サーバーは、大量のデータと計算能力を必要とするMLモデルのトレーニングやデプロイに利用できる。
- データベースホスティング:データベースワークロードには、高い性能、セキュリティ、信頼性、スケーラビリティが求められる。
- ミッションクリティカルなアプリケーション:ERPやCRMシステムなどのミッションクリティカルなアプリケーションには、高い性能、信頼性、セキュリティが求められる。こうしたシステムのホスティングには、物理サーバーがよく利用される。
- ベアメタルクラウドコンピューティング:主要なクラウド事業者はすべて、クラウドコンピューティングサービスの一種であるベアメタルクラウドコンピューティングを提供している。高い性能、制御性、分離性を求める顧客に利用されている。
物理サーバーを利用する業界
物理サーバーの用途を活用している業界には、金融サービス、医療、政府・防衛、航空宇宙、物流、公共サービス・公益事業、製造、メディア・エンターテインメントなどがある。これらの分野では、物理サーバーが提供する信頼性、性能、セキュリティ、分離性、所有権が重視されている。
仮想サーバーとは?
「仮想サーバー」とは、物理サーバーをデジタルで再現したものだ。通常は、元の物理サーバーのリソースの一部だけを使って作成され、同じハードウェア上で多数の同一の仮想サーバーを稼働させる。仮想化はクラウドコンピューティングの鍵であり、大手テクノロジー企業がハードウェアを最大限に活用しながら、世界規模で効率的なリソースを提供できる仕組みでもある。
最新のハードウェアとソフトウェアをすべて搭載した、大型のラックマウント型サーバーがあると想像してほしい。このマシンは、高い計算能力、大容量のストレージ、驚異的な速度、信頼性、セキュリティを備えている。
そこへ顧客が現れ、そのマシンをサイトのホスティングに借りたいと申し出る。
しかし、さらに2人の顧客がやってきて、そのマシンをデータベースの管理に借りたいと言う。そこで、そのラックマウント型物理サーバーを仮想サーバーに変換し、複数のVMを作成して、マシンのリソースを共有させる。
各VMには、CPU、メモリ、ストレージなどの専用リソースが割り当てられる。こうして各VMは仮想サーバーとなり、物理ホスト内で分離されたシステムとして動作する。
これを大規模にしたものが、クラウドコンピューティングの成長と拡大を支えている。
主な特徴
仮想サーバーには、いくつか独自の重要な特徴がある。次のとおりだ。
- リソース共有:仮想サーバーは、CPU、メモリ、ストレージなど、1台の物理サーバーのリソースを共有できる。
- スケーラビリティと柔軟性:仮想サーバーは、リソースをデジタルで追加・削除することで、容易に規模を拡大・縮小できる。また、簡単に移行やバックアップを行える。
- 分離性:仮想サーバーは互いに分離されているため、あるVMが別のVMに影響を与えることはない。これにより、セキュリティと信頼性が向上する。
- 信頼性:仮想サーバーは通常、冗長構成を前提に設計されているため、物理サーバーより信頼性が高い場合がある。ある仮想サーバーが停止したり、障害やダウンタイムが発生したりしても、別の仮想サーバーが代わりに稼働できる。ただし、物理サーバーが停止すると、その上にあるすべてのVMも停止する。
用途
仮想サーバーの用途は事実上無限だ。あらゆる業界で、さまざまなアプリケーションに幅広く利用されている。一般のユーザーも、オンラインで閲覧したり、プラットフォームやデジタルアカウントにログインしたりする際、知らないうちに毎日仮想サーバーを利用している。
仮想サーバーの代表的な用途には、次のようなものがある。
- Webホスティング:仮想サーバーは、スケーラブルで手頃な価格であるため、Webホスティングに利用されている。
- データベースホスティング:仮想サーバーは、データベースホスティングにも適している。データベースサーバーは、CPUやメモリなど、大量のリソースを必要とすることが多い。仮想サーバーなら、専用サーバーのような高いコストをかけずに、データベースサーバーに必要なリソースを提供できる。
- メールホスティング:仮想サーバーは、メールホスティングにも利用される。大量のメールを処理するには、メールサーバーに信頼性とスケーラビリティが必要だ。
- アプリケーションホスティング:仮想サーバーは、さまざまなアプリケーションのホスティングに利用でき、それらが必要とする性能とスケーラビリティを提供する。
- テストと開発:DevOpsやDevSecOpsのチームは、分離された安全な環境である仮想サーバー上で、ソフトウェア、アプリ、APIのテスト、開発、デプロイを行うことが多い。
こうした一般的な用途に加えて、仮想サーバーは次のようなさまざまな目的にも利用できる。仮想デスクトップ、クラウドコンピューティング、HPCなど、そのほかにも多くの用途がある。
仮想サーバーと物理サーバー:違いは何か?
ここでは、物理サーバーと仮想サーバーの違いと比較について詳しく見ていく。

アーキテクチャ
序文で述べたように、物理サーバーと仮想サーバーの主な違いは、マシンの構成、つまりアーキテクチャにある。
- 物理サーバーは、単純で直線的なアーキテクチャを持つ。すべてのハードウェアは下位層に配置される。CPU、GPU、RAM、ストレージ(HDD/SSD)、電源ユニットなどだ。その上の層にOSがインストールされ、最上位層にアプリやソフトウェアが配置される。
- 仮想サーバーは、より複雑なアーキテクチャを持つ。1つの仮想サーバー構造は何度も分岐し、複数のVMをホスティングできる。仮想サーバーの基本アーキテクチャでは、最初の層にベアメタルハードウェアがあり、その上に仮想化層またはハイパーバイザーがインストールされる。ハイパーバイザーはその上にある第3層のVMを作成・管理し、各VMには追加の層としてOSが配置される。最後に、OSの上にある最終層にアプリとソフトウェアが置かれる。
コスト
仮想化テクノロジーは物理サーバーより複雑で、ある意味では高度だが、大規模に導入すれば費用対効果も高い。
- 物理サーバーのテクノロジーには高いコストがかかる。企業が高性能な物理サーバーを構築するには、潤沢な資金が必要だ。しかし、その価格の一部だけで、仮想サーバーが提供する最高水準のリソースをすべて利用できる。
- 仮想サーバーは運用コストが高いが、レンタル費用は安い。グローバルに仮想サーバーを提供するデータセンターを構築・運用するには、クラウド事業者にとって非常に高いコストがかかる。顧客にサービスを提供するために必要なすべてのハードウェアとソフトウェアの費用を負担しなければならない。しかしユーザーにとっては、このテクノロジーを利用するほうが、自社で物理サーバーを構築するよりはるかに安い。
ハードウェアとソフトウェアのコストに加えて、仮想サーバーを利用する場合、通常は企業がその保守を担う必要もない。仮想サーバーのハードウェアが故障しても、事業者が迅速に切り替えるため、利用者は気付かない可能性が高い。物理的な侵入、ハードウェアの盗難、サーバーの電気料金、自然災害、火災、洪水、地震などについても、クラウド仮想化事業者を選ぶ仮想サーバーのユーザーは心配する必要がない。
性能
性能については、物理サーバーと仮想サーバーは拮抗している。実際には、どちらのシステムが優れた性能を発揮するかを決める要因がいくつもある。構成、ハードウェアと計算能力、ソフトウェア、ネットワークなどが、サーバーの性能を左右する要素だ。
- HPC向けの物理サーバー:企業がオンプレミスの物理サーバーを導入したり、クラウド事業者からベアメタルサーバーをレンタルしたりするのは、激しい計算処理を実行するためだと一般に考えられている。物理サーバーは高性能なシステムと結び付けられることが多い。
- 柔軟性に優れた仮想サーバー:仮想サーバーも非常に高いレベルで構成できる。特に現在は、機械学習やAIなどのイノベーションを支える新しいハードウェアとソフトウェアが登場している。さらに、最新のサーバーハードウェアとソフトウェアの多くは非常に高価だ。そのため仮想サーバーは、最新テクノロジーを利用するための手軽な入口となる。
信頼性
性能と同様に、信頼性はマシン、ソフトウェア、ネットワーク、構成に左右される。物理サーバーと仮想サーバーはどちらも、異なる方法と理由で非常に高い信頼性を持つように構成できる。
- 仮想サーバーは冗長性を提供する:仮想サーバーは、ほぼ例外なく冗長システムとして提供される。つまり、VMに障害が発生したり、VMに関連付けられたネットワークでダウンタイムが発生したりしても、別のVMからシステムの運用を継続できる。物理サーバーではそうはいかない。
- 物理サーバーは信頼性を提供する:物理サーバーに冗長性を組み込むのは技術的に難しく、一般的ではなく、コストも高いため、単一障害点になりやすい。一方で、ハイパーバイザーや追加のソフトウェア層に依存せず、クラウド事業者のテクニカルサポートチームに頼らずローカルでトラブルシューティングできるため、問題が起こり得る箇所が少ないという利点もある。
管理の難しさ
サーバー管理は、物理サーバーでも仮想サーバーでも複雑になり得る。ただし、外部事業者の仮想サーバーを運用している場合、こうした作業の大半は事業者に委託される。
- 物理サーバーには高度な仮想化の知識は必要ないが、物理サーバーのリソースを最大限に活用するのは依然として難しい。ベアメタルサーバーの管理者にとって、個別の構成、最適化、監視、可視化は困難な作業となる可能性がある。
- 仮想サーバーテクノロジーには高度なスキルが必要となるのは、テクノロジーが大きく進化しているためだ。多くのベンダーが、使いやすいインターフェースを備えた仮想サーバー管理用クラウドプラットフォームを提供している。一方、最先端の仮想化テクノロジーを活用する企業は、VMの性能を最大化するための幅広いツールを利用できる。集中管理プラットフォームによって可視化を強化することも可能だ。このレベルで仮想サーバーを管理するにはノウハウと経験が必要だが、そのメリットは課題を上回る。
移行
物理サーバーよりも仮想サーバーのほうが移行しやすい。これは、仮想サーバーは1台の物理サーバーから別の物理サーバーへ簡単にコピーできるためだ。ユーザーは数回クリックするだけでVMを移行できる。
一方、物理サーバーは物理的に移動させ、再構成する必要がある。つまり、システム全体を手動でバックアップし、新しいマシンに読み込ませなければならない。
セキュリティ
仮想サーバーと物理サーバーはどちらも安全に運用できるが、慎重な構成と管理が必要だ。さらに、どちらのテクノロジーも一定レベルの分離性を提供する。
- 仮想サーバーは攻撃に対して脆弱になる可能性がある。たとえばハイパージャッキングなどに対しては、仮想化ソフトウェアが適切に構成されていない場合、脆弱になる可能性がある。VMは通常、互いに分離され、ホストサーバーからも分離されているが、攻撃対象領域は広がる。
- 物理サーバーは物理的な攻撃に対して脆弱になる可能性がある。適切に保護されていない場合、物理サーバーは高い分離性を実現できるものの、攻撃を受けてしまうと単一障害点となる。それでも、VMを実行する基盤の物理サーバーについても同じことが言える。
要点:ビジネスにおける仮想サーバーと物理サーバー
仮想サーバーと物理サーバーには、それぞれメリットとデメリットがある。ビジネスに最適な選択肢は、具体的なニーズや要件によって異なる。
総合的に見ると、仮想サーバーはほとんどの企業にとって適した選択肢だ。手頃な価格で、優れた信頼性と最新テクノロジーへのアクセスを提供し、非常に高いスケーラビリティを備えている。ただし、より高い所有権、高い性能、万全のセキュリティを必要とする企業には、物理サーバーのほうが適している可能性がある。
当社による最適なサーバー仮想化ソフトウェアの分析を読んで、最新の仮想化技術の進歩を活用し始めよう。